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DB-Engines ランキング定点観測 2026年3月

はじめに

DB-Engines はデータベース管理システムの人気を毎月計測・公開しているサービスで、2012年11月から継続的にスコアを追跡している。スコアはGoogle・Bingなどの検索エンジンヒット数、Google Trends、Stack Overflowの言及数、LinkedInのプロフィール件数、Indeed・Simply Hiredの求人数、Twitterの言及数を標準化・集計して算出される。実際のインストール数や利用数を直接測定するものではなく、「どれだけ話題にされているか」を反映した指標となっている。

本記事では2026年3月時点のデータを使い、上位50件の長期推移と急上昇・急下降しているデータベースを整理する。

調査方法

DB-Enginesのトレンドページ(/en/ranking_trend)に埋め込まれているJavaScriptデータをPythonでスクレイピングし、matplotlibで可視化した。データは2012年11月から2026年3月まで月次で記録されており、487件のDBシステムが収録されている。

分析対象の絞り込みは以下の条件で行った。

条件 内容
上位50件の推移 2026年3月時点のスコアで上位50件を抽出
モメンタム分析 スコア3.0以上かつ直近1年・3年の変化率を算出
対象除外 スコア3.0未満のマイナーDBはノイズが大きいため除外

スクリプトは以下で公開している。

  • dbengines_top50_trend.py — 上位50件の推移グラフを生成
  • dbengines_momentum.py — 急上昇・急下降分析グラフを生成

上位50件のスコア推移

2026年3月時点のTop 50は以下の通り。

順位 DB名 スコア
1 Oracle 1182.46
2 MySQL 858.34
3 Microsoft SQL Server 711.47
4 PostgreSQL 680.08
5 MongoDB 383.58
6 Snowflake 211.24
7 Databricks 145.81
8 Redis 145.19
9 IBM Db2 111.38
10 Elasticsearch 103.58
11 Apache Cassandra 101.88
12 SQLite 95.97
13 MariaDB 87.00
14 Microsoft Azure SQL Database 73.92
15 Apache Hive 72.95
16 Splunk 72.21
17 Microsoft Access 67.56
18 Amazon DynamoDB 65.42
19 Google BigQuery 55.82
20 Neo4j 47.32
21 Apache Solr 32.79
22 SAP HANA 32.09
23 Teradata 31.08
24 FileMaker 29.31
25 SAP Adaptive Server 25.53
26 Microsoft Azure Cosmos DB 22.75
27 Apache Spark (SQL) 22.07
28 ClickHouse 22.01
29 PostGIS 21.88
30 InfluxDB 20.73
31 OpenSearch 20.27
32 Apache HBase 19.18
33 Firebird 17.44
34 Microsoft Azure Synapse Analytics 15.98
35 Microsoft Fabric 15.12
36 Firebase Realtime Database 15.11
37 Amazon Redshift 14.25
38 Informix 13.78
39 Memcached 13.68
40 Apache Impala 12.67
41 Apache Flink 10.25
42 Couchbase 10.15
43 DuckDB 9.41
44 Google Cloud Firestore 9.29
45 Amazon Aurora 9.16
46 Endeca 9.08
47 Prometheus 8.71
48 Vertica 8.39
49 Pinecone 7.74
50 H2 7.56

下図はRank 1–25(上段)とRank 26–50(下段)の長期スコア推移。

DB-Engines Top 50 スコア推移グラフ DB-Engines — 上位50件のスコア推移(2012年11月〜2026年3月)

長期トレンドから読み取れる主な変化を整理する。

DB 傾向 備考
Oracle 漸減 2013年頃をピークに長期低下。依然1位
MySQL 漸減 2位を維持するが絶対値は縮小傾向
PostgreSQL 緩やかに上昇 MySQL との差を着実に縮めている
Snowflake 急成長 2016年からDB-Enginesに登場。2020年IPO前後に急上昇し6位まで到達
Databricks 急成長 2020年以降に急伸。7位
MongoDB 安定 NoSQL勢の中で唯一Top 5を維持

急上昇データベース

スコア3.0以上を対象に、直近1年・3年の変化率を算出した。

急上昇・急下降データベース分析 DB-Engines — 急上昇・急下降ランキング(スコア3.0以上、1年・3年変化率 Top 10)

直近1年(2025年3月→2026年3月)

順位 DB名 カテゴリ 最新スコア 1年前 変化率
1 Weaviate ベクトルDB 4.52 1.58 +186%
2 Alibaba Cloud PolarDB クラウドRDB 3.31 1.19 +179%
3 Pinecone ベクトルDB 7.74 3.17 +144%
4 Qdrant ベクトルDB 4.79 2.03 +136%
5 Milvus ベクトルDB 6.02 2.77 +117%
6 DolphinDB 時系列DB 4.58 2.29 +100%
7 TimescaleDB 時系列DB 5.42 3.48 +55%
8 Databricks クラウドDWH 145.81 96.01 +52%
9 DuckDB 組み込み分析DB 9.41 6.71 +40%
10 Prometheus 時系列DB 8.71 6.38 +37%

1年変化率の上位はベクトルDB(Weaviate・Pinecone・Qdrant・Milvus)が独占している。いずれもRAG(Retrieval-Augmented Generation)やセマンティック検索の基盤として採用が増えており、生成AIブームの需要を直接吸収している形となる。

DuckDBは+40%と安定した伸びを継続。インプロセス分析エンジンとして、Snowflakeコストの削減やローカル分析基盤として採用が広がっている。

直近3年(2023年3月→2026年3月)

順位 DB名 カテゴリ 最新スコア 3年前 変化率
1 Qdrant ベクトルDB 4.79 0.27 +1694%
2 Weaviate ベクトルDB 4.52 0.51 +781%
3 Milvus ベクトルDB 6.02 0.81 +648%
4 Pinecone ベクトルDB 7.74 1.48 +423%
5 DuckDB 組み込み分析DB 9.41 2.14 +339%
6 Databricks クラウドDWH 145.81 60.86 +140%
7 QuestDB 時系列DB 3.66 1.89 +94%
8 Snowflake クラウドDWH 211.24 114.40 +85%

3年スパンで見るとベクトルDB4強の台頭がより鮮明になる。Qdrantは3年前のスコアが0.27から4.79へ、約17倍。DuckDBも3年で4.4倍に成長しており、2023年以前とは明らかに異なるカーブを描いている。

急下降データベース

直近1年(2025年3月→2026年3月)

順位 DB名 カテゴリ 最新スコア 1年前 変化率
1 Aerospike NoSQL (Key-Value) 3.45 5.22 -34%
2 Couchbase NoSQL (Document) 10.15 15.05 -33%
3 Microsoft Access デスクトップRDB 67.56 96.72 -30%
4 FileMaker デスクトップRDB 29.31 39.06 -25%
5 Ehcache インメモリキャッシュ 3.16 4.22 -25%
6 Elasticsearch 検索エンジン 103.58 131.38 -21%
7 Apache HBase NoSQL (Wide Column) 19.18 24.08 -20%
8 Greenplum MPP分析DB 6.26 7.83 -20%
9 CouchDB NoSQL (Document) 6.05 7.34 -17%
10 Oracle Essbase OLAP/多次元DB 4.54 5.49 -17%

Elasticsearchは-21%と大きく落としている。フルテキスト検索用途がOpenSearch(Elasticsearchのフォーク)や各クラウドマネージドサービスへ分散している影響が考えられる。Microsoft Access(-30%)・FileMaker(-25%)といったレガシーデスクトップDBの退場も続いている。

直近3年(2023年3月→2026年3月)

順位 DB名 カテゴリ 最新スコア 3年前 変化率
1 Netezza オンプレDWH 6.28 16.31 -62%
2 Presto 分散クエリエンジン 5.79 13.89 -58%
3 CouchDB NoSQL (Document) 6.05 14.46 -58%
4 Couchbase NoSQL (Document) 10.15 23.36 -57%
5 MarkLogic NoSQL (Document/XML) 4.02 8.87 -55%
6 DataStax Enterprise NoSQL (Wide Column) 3.37 7.33 -54%
7 Teradata オンプレDWH 31.08 63.74 -51%
8 Vertica オンプレ分析DB 8.39 16.98 -51%

3年スパンでは、Hadoopエコシステムと密接に関連していたオンプレDWHや分散クエリエンジンの下落が目立つ。いずれもオンプレミス前提のアーキテクチャで競争力を失い、クラウドネイティブな設計への置き換えが進んでいる構図が見える。

考察

今回のデータから浮かび上がるトレンドを3点整理する。

1. 生成AIがベクトルDB需要を直接牽引している

Qdrant・Weaviate・Milvus・Pineconeの4つはいずれも2023年前後からスコアが急上昇しており、ChatGPT登場後のRAGアーキテクチャ採用拡大と時期が一致する。これらはRDBMSや汎用NoSQLの代替ではなく、LLMアプリケーションのインフラとして独自の需要を創出している。

2. DuckDBはクラウドDWH代替の文脈で注目を集めている

DuckDBの3年変化率+339%は、分析用途においてクラウドDWHのコスト削減代替として採用が広がっていることを反映している。インプロセスで動作するためインフラが不要で、小〜中規模の分析ワークロードであれば十分な性能を発揮できる。

3. レガシーDWH・Hadoopエコシステムの退場が加速している

オンプレDWHや分散クエリエンジンはいずれも3年で-50%超の下落。オンプレミス前提のアーキテクチャやHadoopエコシステムと密接に関連していた処理系はクラウドネイティブな設計に対して競争力を失い、エンジニアの関心が急速に薄れていることがDB-Enginesのスコアにも反映されている。

まとめ

  • 上位50件の長期推移: Oracle・MySQL・SQL Serverが漸減、PostgreSQLが緩やかに上昇、Snowflake・Databricksが急成長
  • 急上昇(1年): ベクトルDB4強(Weaviate・Pinecone・Qdrant・Milvus)が+100〜+186%。AIブームの直撃
  • 急上昇(3年): Qdrant +1694%、DuckDB +339%。構造的な変化として定着しつつある
  • 急下降: レガシーDWH(Teradata・Netezza)が3年で-50%超。NoSQL第一世代(Couchbase・CouchDB)も退潮

参考資料

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