📝

AI検索時代に個人技術ブログのトラフィックはどう変わったか

はじめに

このブログのGA4データを公開する。対象期間は2023年6月から2026年2月までの約2年8ヶ月。計測開始から現在までのセッション数の推移を月次で追い、ChatGPT・Google AI Overview・Perplexityといった生成AI検索の台頭がトラフィックにどう影響したかを自分のデータで検証する。

結論を先に書いておく。ピーク比で約72%のセッションを失った。ただし、これは個人ブログの敗北ではなく、検索という行動様式の構造転換に伴う必然的な結果として捉えている。

トラフィックの全体像

月次セッション数の推移(2023年6月〜2026年2月) zatoima.github.io - GA4月次セッション数推移。縦線はAI関連主要イベント

指標
計測開始 2023年6月(12,574セッション)
実質ピーク 2025年2月(16,640セッション)
最新値 2026年2月(4,669セッション)
ピーク比変化 -71.9%
最大単月下落 2025年3月(-27.5%)

月次データ全体を見ると、単純な右肩下がりではなく複数のフェーズを経ている。

5つのフェーズで見る変遷

フェーズ1: 安定期(2023年6〜7月)

月平均12,474セッション。ChatGPTはすでに普及していたが、この時点では「ChatGPTで調べてみたが、念のため記事も確認する」というフローが残っていた。AIが検索を完全に代替するには精度への信頼が不足しており、技術ブログへの流入は保たれていた。

フェーズ2: 計測再開後の下落(2023年9月〜2024年4月)

2023/09: 20,183(計測再開直後・外れ値)
2023/10: 17,008  -15.7%
2023/11: 15,215  -10.5%
2023/12: 13,818   -9.2%
2024/01: 12,307  -10.9%
2024/02: 11,955   -2.9%
2024/04: 11,729(以降横ばい)

7ヶ月で約8,500セッション減少(-41.9%)。GoogleのSGE(Search Generative Experience)が2023年5月に米国で実験を開始した時期と重なる。日本語コンテンツへの直接影響は限定的でも、SEO環境の変化が下落のベースラインを形成し始めていた。

フェーズ3: 意外な回復(2024年5〜10月)

Google AI Overviewが2024年5月に米国正式展開された直後、-12.2%と落ち込んだ。しかしその後に逆回復するという予想外の動きを見せた。

2024/05: 10,303  -12.2%
2024/07: 10,878  +7.3%
2024/08: 11,695  +7.5%
2024/09: 13,389  +14.5%
2024/10: 16,836  +25.7%(最高値)

この回復の背景として考えられるのは、当時のコンテンツ特性だった。PostgreSQL・Oracle・AWSなどDB/インフラ系の記事は、バージョン依存の挙動やエラー事例の具体性など、2024年時点のAIが代替しにくい領域をカバーしていた。実際に環境で試した一次情報は、学習データからの推論より信頼される場面がある。

フェーズ4: 小康期(2024年11月〜2025年2月)

月平均14,641セッション。2025年2月には16,640という実質的なピークに達した。「AI検索の影響を乗り越えた」と感じてもおかしくない水準だったが、これが崖の縁だった。

フェーズ5: 急落・構造転換(2025年3月〜現在)

2025/02: 16,640(ピーク)
2025/03: 12,065  -27.5%
2025/04:  8,992  -25.5%
2025/05:  7,722  -14.1%
2025/06:  6,750  -12.6%
2025/08:  5,390  -23.2%
2025/09:  5,031(底)
2026/02:  4,669  -9.7%

ピークから7ヶ月で約69.8%減。月平均で約1,600セッションずつ失い続けた計算になる。この下落は過去のフェーズとは性質が違った。

AI検索との相関

タイミングの一致

AI関連イベント 時期 トラフィックへの影響
ChatGPT登場 2022年11月 計測外(影響は潜在的)
Google SGE実験(米国) 2023年5月〜 フェーズ2の下落と相関
Google AI Overview 米国正式展開 2024年5月 一時落ち込みも回復
Google AI Overview 日本語展開本格化 2025年初頭 フェーズ5の急落と一致
Perplexity/Claude 日本市場浸透 2025年〜 継続的な流出

2025年3月の急落(-27.5%)を起点とする構造転換の推定要因を重要度順に挙げる。

第1要因: Google AI Overview の日本語展開 「PostgreSQL 接続方法」「ORA-00001 エラー原因」「AWS S3 一覧 CLI」といったHow-to系・トラブルシューティング系のクエリは、AI Overviewが得意とする領域にあたる。ユーザーは検索結果ページを離れることなく答えを得られるようになった。

第2要因: Googleコアアップデートによる個人ブログ評価の変化 E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)基準の厳格化が個人ブログに不利に働いた可能性がある。

第3要因: Perplexity等 AI検索の日常化 技術情報を調べる際に「Googleで検索する」から「Perplexityに聞く」「Claudeに聞く」への行動変容が、エンジニア層で標準化した。私のブログの想定読者層は、AI検索への移行が最も早いセグメントでもある。

ゼロクリック化の現実

AI検索が「ゼロクリック」を生み出す仕組みはシンプルで、ユーザーがAIチャットや検索結果ページで必要な情報を完結させてしまうため、元サイトへのクリックが発生しない。

ゼロクリック化しやすいクエリ(流入を失いやすい):

  • PostgreSQL バージョン確認 コマンド
  • psql 接続方法 引数
  • ORA-12154 原因
  • AWS CLI S3 バケット一覧

これらは数十文字で完結する回答をAIが返せる。

ゼロクリック化しにくいクエリ(流入が残りやすい):

  • PostgreSQL レプリケーション 実際にやってみた
  • Aurora PostgreSQL バージョンアップ 失敗談
  • OCI Always Free ARM64 ベンチマーク 実測

実体験・失敗談・特定環境での検証結果は、学習データから推論するAIが最も苦手とする領域となる。

残った28%が示すもの

現在の月次セッション数(約4,700)はゼロではない。この残った流入の内訳を、直近のデータから分析する。

最近のPV上位3記事の流入元チャネルを見ると、DuckDB関連記事やSnowflake MCP記事はDirect(直接流入)が80〜86%を占める。内訳はブックマーク・URL直打ち・チャットツール経由(ダークソーシャル)で構成される。一方でExcel記事(月544PV)はOrganicが主体で、汎用的なHow-to記事は検索流入がまだ残っている。

構造変化後に残っているのは主に以下の2種類になる。

  1. 特定の実験環境・一次情報を求めてたどり着く読者 — 「OCI Free + PostgreSQL」「Snow CLI 実測」などの組み合わせは、AIがサマリーを出すにも参照元が必要であり、記事自体にアクセスが発生する
  2. 指名読者 — SNSや以前の記事を通じてブログ自体を認知しており、定期的に訪れる層

この2つは、Google検索の変動に関係なく維持される。

まとめ

33ヶ月のデータから読み取れることを整理する。

フェーズ 期間 月平均セッション 変化の背景
安定期 2023/06〜07 12,474 ChatGPT普及初期、影響限定的
下落期 2023/10〜2024/04 13,800→11,700 SGE実験・SEO環境変化
回復期 2024/05〜10 10,300→16,800 一次情報の需要が残存
小康期 2024/11〜2025/02 14,641 最後の安定期
構造転換期 2025/03〜 7,000→4,700 AI Overview日本展開・行動変容定着

72%を失ったが28%は残った。この数字を「崩壊」と見るか「コアが残った」と見るかは立場によるが、個人的には後者で捉えている。

Googleの検索結果に依存したHow-to記事の流入は構造的に戻らない。これはこのブログだけの話ではなく、日本語圏の個人技術ブログ全体が直面している転換点になる。次のフェーズで価値を持つのは、AIが参照元として引用したくなるような一次情報の蓄積と、検索を経由せず直接訪れる読者との関係づくりだと考えている。

参考資料

GitHubで編集を提案